書籍

人間の未来と可能性を存分に味わう:書籍『脳と人工知能をつないだら、人間の能力はどこまで拡張できるのか 脳AI融合の最前線』レビュー

書籍『脳と人工知能をつないだら、人間の能力はどこまで拡張できるのか 脳AI融合の最前線』のレビューです。
本書は、人間の未来と可能性を存分に味わって未来志向上位勢になれる書籍です。

次のような人に本書はおすすめ。

  • ドラえもんやアトムなど、フィクションのロボットが好きな人
  • 発展中の科学技術を知って興奮したい人
  • 人工知能発達の歴史を大まかに知りたい人

以下では、ごく簡単な内容紹介と自分なりの気付きやポイント、関連作品を述べていきます。

『脳と人工知能をつないだら、人間の能力はどこまで拡張できるのか 脳AI融合の最前線』について

  • 著者は紺野大地、池谷裕二。紺野は『ERATO 池谷脳AIプロジェクト』のメンバーであり、東京大学医学部附属病院老年病科医師(本書より)。
  • 2021年12月、講談社出版。電子版は2022年1月1日発行
  • 読み終えるまでの平均的な時間:6時間18分(315ページ)(Kindleより)

過去・現在・未来に分けて、脳とAI融合の実験結果や可能性を紐解く。
第1章は「過去」。
1956年にはじめて「人工知能」という言葉が使われてから、現在までに3度起こった人工知能ブームを中心に歴史を紐解く。
第2章は「現在」。
個人だけでなく企業からもAlphaGoのような優れたAIが生み出され、脳との融合が模索されている最前線をまとめる。
第3章は「未来」。
次世代の研究を紹介しつつ、著者らが考えるAIとの共存・未来について解説する。

となりの人工知能くん

得体はしれないが、便利すぎて手放せない人工知能がだれのとなりにも居る時代が、すぐそこまで来ている。
希望と興奮とともに、そう感じさせてくれるのが本書です。
「人工知能」という言葉が生まれた1956年から2022年で66年。
ようやくここまで来たか、という感慨を持つ20代です。

とくに気になったことの1つが、意識の数理モデルであるIIT(Integrated Information Theory:統合情報理論)です。
SFと親和性の高い人ならだれしも、いつロボットに意識が芽生えるだろうかと気になっているのではないでしょうか
「そもそも意識とは?」という哲学的問いも存在しますが、意識を数値的・客観的に表現しようとする試みは興味深いですね。

最近でも、議論百出となったニュースがあります。
開発したAIに意識があると、Googleの開発者個人が発表しました。
2022年6月15日公開、ナゾロジー:この記事は技術者とAIの会話の要約です。)
IITで意識レベルは計算できたのか調べてみましたが、計算したという情報は見つかりませんでした。
今後もこの手のニュースは出てきそうですね。

ただし、聞けば何でも答えてくれたり、まるで人間のように振る舞ったりする汎用AI(AGI)の普及にはまだ時間がかかりそうです。
ある程度役割を限定したAIサービスは、すでに一般公開・普及が進んでいます。
Google検索やSiriもその一種と言えますね。
口語のような書き方で指示すると、プログラミング言語で回答してくれる「GitHub Copilot」というサービスもあります。
プログラミングもAIが対応でき始めているというのは、シンギュラリティを予感させますね。

ドラえもんやアトムのようなロボットが登場するまでは生きていたい20代。

超(スーパー)人類とやらになるのだ!

教育-本

分野の発展に伴って求められる人材レベルも上がっていくので、行き着くところは超人類なのでしょうか。

人工知能の発達には、それを支える人類そのものの発展も欠かせないでしょう。
そこで、人類をアップデートする手段の1つとして、インプラントが研究されています。
イーロン・マスク率いるNeuralinkが言うところの「超人類」の研究です。

SF版ブラックジャックのような漫画『AIの遺電子』の世界が到来するかも、とワクワクしています。
子どもがインプラント手術を受けてすぐ、友だちと連絡を取り合っているような世界です。
あるいは、科学と魔術が融合するラノベ『とある魔術の禁書目録』シリーズで出てきた学習装置(テスタメント)の実現。
装着すると脳に直接経験や情報を入力できるので、暗記の概念がくつがえる装置です。

想像がふくらみますね。
個人的には、ESPやPKのような超「能力」ともリンクしないかなあと勝手に妄想しています。

人が一生懸命作ったっていうストーリーはロボットには作れない

なあリサ…/旨い不味いでいったら何でもロボに作らせりゃ間違いないわけだ/でも/リサが一生懸命作ったっていうストーリーは/ロボットには作れない(漫画『AIの遺電子』より)

AI分野以外でも、本書のような一般向け啓発本がほしいですね。

現状はインプラントもテスタメントも実用化されていないので、地道な教育・普及活動が必要です。
AI分野はそういった活動も盛んで、インターネット上の情報共有や本書のような啓発本が充実しています。

それでは、他分野はどうでしょうか。
一例としてぼくが学生時代に研究していた流体分野では、ここまで読者をワクワクさせる書籍はなかったように思います。
試しに、Googleで「流体 書籍」と「AI 書籍」の検索結果を見比べてみましょう。
どちらが一般人への普及・啓発に力が注がれている分野か、一目瞭然ですね。

流体分野でもAI分野でも、ここまで発展させてきたのは人間です。
ぜひここまでとこれからのストーリーをもとに、読者をワクワクさせる啓発本がさまざまな分野で増えてほしいと願っています。

まとめ

今回は、書籍『脳と人工知能をつないだら、人間の能力はどこまで拡張できるのか 脳AI融合の最前線』をレビューしました。
未来に向けてワクワクが止まらなくなりました。
ありとあらゆる可能性がAIに内包されていることを知ると、なんとなく賢くなった気になります。
未来の彼方を覗き見したい人には、必読のAI入門書です。