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仕事は消えるが未来は残る:書籍『ユーチューバーが消滅する未来 2028年の世界を見抜く』レビュー

書籍『ユーチューバーが消滅する未来 2028年の世界を見抜く』を読みました。

悠
ユーチューバーを目指していなくてよかった……。

以下で、かんたんな内容紹介とレビューを述べていきます。

本レビューはネタバレ上等です。
ネタバレされたくない方は自己責任でお読みください。

『ユーチューバーが消滅する未来 2028年の世界を見抜く』について

著者岡田斗司夫
発行PHP研究所、2018年11月。電子書籍版もほぼ同時発行。
読了時間たぶん2時間くらい。Kindleの「読み終えるまでの平均的な時間」は2時間36分。
きっかけ同著者の『大人の教養として知りたい すごすぎる日本のアニメ』(KADOKAWA、2017年12月発行)がおもしろかったので、Kindle Unlimitedで何かないかと探したら見つけた一冊。

著者が考える10年後、2028年の日本を解説。
ユーチューバーの未来に限らず、広くAIや科学技術が人々の意識・生活・社会にどのような変革をもたらすのか予測する。
(本書は2016〜2017年の「ニコニコ生放送」で著者が話した内容をベースにしている。)

ユーチューバーを目指すなんてもってのほか

ユーチューバーに憧れる子供が増えているそうです。(中略)ユーチューバーを目指すのなんてもってのほかです。(本書より)

2017年度の調査結果では、小学生男児のなりたい職業第6位にランクイン。
(日本FP協会 小学生『将来なりたい職業』ランキングより)
ちなみに、2021年度の同調査では、男児第4位で初のトップ5入り(女児21位)。
PDFが公開されているので気になる方はこちらをどうぞ。

著者の願い虚しく?ユーチューバー人気は衰えていないように見えますが、実は高校生になるとトップ10圏外になっています。
第一生命保険株式会社の2021年度の調査結果(PDFはこちら)です。

2017年度に小学6年生だった男子が、4年後の高校1年生になるとユーチューバーに憧れなくなったのでしょうか?

残酷な話、小学6年生が2017年当時に本書を(あるいはニコ生を)みたとはあまり思えないので、自然な変化なのかもしれません。
ほかにもっと魅力的な職業を見つけたとか、そもそもYouTubeに飽きたとか。

自動翻訳は精度が高くなっており、AI VTuberはすでに実現し、ChatGPTと画像生成AIの組み合わせも台頭してきました。
インフレの時代です。

悠
バトル系のジャンプ漫画か?

そのような現実を高校生くらいになると肌で感じてしまうのも、本書的ではありますが理由としてありえそうです。

発売から5年後に読んだ人間の感想としては、「ユーチューバーを目指していなくてよかった〜」くらいなものですが。
同世代がゲームを配信しながら投げ銭をもらっている姿を見て、うらやましいだなんて思っていません。

未来を予測するための3大法則を使って2033年を予測してみようとした

著者が考える3大法則は次のとおりです。

  • 第一印象至上主義
  • 考えるより探す
  • 中間はいらない

これらは現在進行系の価値観の変化ともいえます。

で!2033年を予測してみようとしました。
今から10年後、大阪万博から8年後、SDGs期限から3年後……。

悠
まあ、車は飛んでいるかな?

細かい予測を書くときりがないので、ざっと箇条書きで書きます。

  • ヘリコプターの民間用というスタンスで、空飛ぶタクシーが普及
  • iPS細胞による再生医療の一部に保険が適用
  • 本業を持たない20代が増加
  • 地方自治体レベルでは、AIを意思決定プロセスに利用していると一部が明言
  • 家庭用2足歩行ロボットが富裕層に普及

悪い予測は省きました。
どうせなら明るい未来を考えたいですよね。

基礎理論〜普及まで30年かかるという本書の主張は、ピタリとハマっていて感動しました。
新型コロナのmRNAワクチン開発です。
2021年9月の日経サイエンス記事によれば、30年の開発史があるそうです。

この30年も、AIの進化にともなって加速するでしょう。
既存の科学技術に当てはまるだけで、AIが未知の理論を提示してくると、その理解が必要になって結局30年近くかかるかもしれませんが。

悠
ぶっちゃけ予測が当たろうが外れようが、死にはしないと気楽に考えるのが一番。

SF作品を使って2033年を予測しt……やめた

『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』と『ブレードランナー』、この両作品は、僕たちの価値観がどう変化していくかを先取りしていると思うんです。(本書より)

赦しを乞う人類を描く両作品。
科学技術を突き詰めていくと結局、紀元元年の存在に心の拠り所を求めるというのは皮肉なものです。

どちらの作品も、読もう観ようと思いつつ、いつでも可能だからと後回しにしている名作の一部です。
そもそも過去の名作は多すぎません?
ファスト映画が流行ったのも理解できます。
案外2033年には新しい形でファストが流行っているのかもしれません。

同様に未来を考えるのに個人的なおすすめは、漫画『AIの遺電子』(作・山田胡瓜、少年チャンピオン・コミックス)。

SF版ブラックジャックと名高い作品で、2023年7月からアニメも放送します。
予習ついでに原作漫画を読んで、2033年にどこまで実現されているか予想してみるのも楽しいかも。
ぼくの予想(というより願望)は、手動運転が保険適用外になっている社会の実現です。

悠
車の運転が嫌いなので……。

未来は面白がった者勝ち

最低限の生活が保障されているんだから、未来は面白がった者勝ちですよ。(本書より)

勝った。

と思いましたが、「これからの日本で広がる格差というのは、経済的な格差ではなく、地縁、人の縁の格差」(本書より)ならば負けます。

コロナ禍で人とのリアルなつながりが見直されましたね。
下地はできたという感じです。

悠
終わった……。

一方で、評価経済社会化も加速すると思います。
地縁、人の縁は数値化できませんが、逆にそれら以外、できるものはなんでも数値化すれば、それだけAIに助けてもらいやすくなります。

定量的な評価はAI任せにして、それ以外に注力する。

AIの発展、AIネイティブ世代の成長にともなって、どんどんこの流れは加速しそうです。
むしろAIネイティブ世代は「大人よりAIのほうが信じられる」といって、世代かい離が起きるかもしれませんね。

悠
アラフォーになっているぼくは信じてもらえない側でしょうね。

まとめ

価値観は変わり、仕事は消えて、子どもには信じてもらえなくなる……。
それでも未来は残ります。

この乱世を楽しまないとやってられない!くらいの気持ちで、2033年には消されていそうなこのレビューも書きました。

どうせなら未来を楽しむ。

今後も未来を予測して、一喜一憂します。
2028年に本書をもう一度読み返してみるのも良いかもしれませんね。